台風30号の死者・行方不明者 19

台風30号の死者・行方不明者 19

<比台風>遺体収容阻むがれき 最大被災地タクロバン
毎日新聞 11月21日(木)21時52分配信

 台風30号による高潮と暴風雨の直撃から22日で2週間となるフィリピン中部のレイテ島。最大の被災地、タクロバンのがれきの中に建つ避難所で暮らす7歳の少女は「家を建てるお金が欲しい」と語った。

沿岸部ではがれきに埋もれた遺体の収容作業が続き、市の担当者は「未報告を含めるとタクロバンだけで死者数は3000人を超える」と明かした。【タクロバン佐藤賢二郎】

【写真特集・フィリピン台風 被害の模様】一面のがれきの中を使える物はないかと探す男性

 タクロバン空港近くのコスタ・ブラバ集落。8日朝の高潮で壊滅的な被害を受け、一面にがれきが散乱する。強烈な日差しが照りつけ、5分も屋外にいたら汗が噴き出す。避難所となっている集会所を訪ねると、ナタリー・ニコルちゃん(7)が黙々とピンクのシャツを洗っていた。

妊娠7カ月の姉ジュリエットさん(21)とこの建物の2階で暮らす。高潮の直撃を受けた集会所の窓は全て割れ、室内には周辺のがれきに埋まった人間や動物の遺体と生ゴミが発する異臭が漂っていた。

 「環境は良くないが、ここで生まれ育った。離れたくない」。数日前から熱があるジュリエットさんが話した。体温計がなく、熱が何度あるかはわからない。

支援物資として届いた薬があるが、胎児への影響が心配で服用はしていない。「病院に行きたいが、どこにあるかわからない」と心配そうに語った。

 出産予定は来年1月。「この子が生まれてくる頃には復興が進んでいてほしい」と願う。望みどおり女の子だったら名前はシャネルにするつもりだ。「ここは本当に美しい場所だった。だから、生まれた子には美しい名前をつけたい」と言う。

 2人の両親は台風前に死亡。台風が直撃した8日、2人が避難していた小学校の校舎1階に高潮が押し寄せた。2階に逃れたジュリエットさんは「天国の両親が助けてくれた」と話す。

一緒にいた男性に救助されたナタリーちゃんは「本当に怖くて泣いていた」と振り返った。小学校に避難していた住民約200人のうち約20人が犠牲になったという。

 小学1年のナタリーちゃんに「今、欲しいモノは?」と尋ねると、「新しい家を建てるお金が欲しい」と答えた。自宅は全壊し、教科書もおもちゃもすべて流された。「早く学校に行って友達と勉強したい」と話した。

 集会所の前では、乗り合いバスの運転手だったシペリーノ・カトールさん(49)が廃材を使って家を再建していた。「材木、屋根用のトタン、壁に使うベニヤ板、くぎ、全て足りない。

買いたくてもお金がない」と嘆いた。バスが高潮で壊れ、収入の道も断たれた。

 道路脇に細長く白いビニール袋が置かれていた。がれきの下から見つかったばかりの男性の遺体が入っていた。周囲に強烈な腐臭が漂う。警察のトラックに積み込む作業を、子供を含む住民たちが鼻を押さえて見守っていた。

作業を指揮するジョセフ・パルメロ医師によると、この日午前だけで収容した遺体は30体。「まだ多くの遺体が残っており、全て回収するにはあと1週間はかかる」と話す。

 タクロバン市によると、21日までに身元が確認された死者は1198人。未確認の遺体と行方不明者は計435人に上る。市の担当者は「墓地には市に報告されていない遺体を含め、3000体以上が埋葬されており、正確な数字を出すのは難しい」と語った。


     (ヤフーニュース からです)