台風30号 11月26日~11月28日

 

理解されなかった「高潮」の警告―フィリピンの台風被害が拡大した理由
ウォール・ストリート・ジャーナル 11月26日(火)10時12分配信

 【タクロバン(フィリピン)】猛烈な台風30号がフィリピンのタクロバンを襲った際、多くの人の生と死を分けた違いは、ある1つの単純な問題にいきつくかもしれない。それは「surge(高潮)」に対する理解が不足していたことだ。

 フィリピンの気象予報当局は、猛烈な嵐――過去最大級の――が最大で7メートルの巨大な波、つまり「高潮」をもたらす可能性があると繰り返し警告していた。だが、多くの人は「高潮」とは何のことがよく分からず、そのリスクに対応することができなかった。

 タクロバンの行政サービス事務所で責任者代理を務めるエベリン・コルデロ氏は「もし、『津波』と言われれば、私はかなり恐れていたはずだ」と話し、「『高潮』と言われても、ピンとこなかった」と言う。

同事務所は台風で最も大きな被害を受けた被災地の1つであるタクロバンで物資の調達を支援している。

 こういった判断の誤りも台風の被害を大きくさせた一因だと見られている。8日に上陸した台風は5235人の犠牲者を出し、台風の多いフィリピンの近代史のなかでも最悪の被害をもたらした。

犠牲者のほとんどがタクロバンとその周辺に集中している。

 アキノ大統領は、なぜこれほど多くの犠牲者が出たのか原因を探るため調査を命じた。

 当局は台風30号の破壊力を大幅に低く見積もり、緊急用の備蓄がはるかに少なかった。また、懸命な努力にもかかわらず、社会的弱者の救出に失敗した。

 ほぼ24時間、タクロバンの地元と国の関係者は助けを求める手段さえなかった。台風直撃の際に、アキノ大統領の指示で責任者としてタクロバン入りしていたロハス内務自治長官は衛星電話を持参していなかった。

ロハス氏は後に、その手落ちを後悔していると語った。 

 ロハス長官は「想像する手段がなかったほか、ヨランダ(台風の現地名)の破壊力を計算する手段もなかったと思う」と述べ、「高潮」という言葉の使用は大きな問題の1つだったと指摘した。

 「高潮」という言葉については「誰も以前に聞いたことがなかったし、誰もそれが何なのか知らなかった」と述べ、「気象学者が使う独特な言葉だと分かっているが、おそらく『津波』と言うべきだった」と話した。

 この2つの言葉の違いは規模の大きさではなく、その発生の仕方にある。フィリピンの気象予報当局は台風の最中に気圧の変化や強風によって発生する巨大な波を「高潮」と表現している。

一方、津波地震によって発生する。

 台風が上陸する前日の7日、アキノ大統領は最大で6メートルに達する高潮がくる可能性があると警告し、低地から避難するよう人々に呼びかけた。「繰り返して言うが、これはかなり危険だ」とアキノ大統領は警告していた。

    (ヤフーニュース からです)

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台風30号の破壊力増大に地理・時期的な要因

By GAUTAM NAIK
 不運にも複数の自然要因が重なったことで、台風30号(英語名ハイエン)は上陸した熱帯低気圧の中で観測史上最大級の嵐になった。そしてハリケーン「カトリーナ」が2005年に米国に襲来して以降、最大規模の高潮をもたらした。

 いくつかの要因がフィリピンを襲った台風30号に壊滅的な力を与えた。集中豪雨、水が集まりやすく高潮が起きやすい地形、それにレースカーに匹敵する速さの突風を伴う強い風だ。
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 英気象庁(メットオフィス)の熱帯低気圧の専門家ジュリアン・ヘミング氏は、「これほどの強風を伴って上陸した嵐の報告はない」と話した。

 米国の科学者の観測によると、台風30号の最大風速は時速約195マイル(秒速約87メートル)だったが、突風はそれをかなり上回る強さだった。これまでの記録は1969年に米国に上陸したハリケーン「カミール」の時速190マイルだった。

 マサチューセッツ工科大学(MIT)のケリー・エマニュエル教授(大気学)は、「この強さの台風は太平洋上で約10年おきに発生する傾向がある。今回の台風は偶然、勢力が最も強いときに上陸した。これは1世紀に1度程度起こると予想される出来事だ」と話した。

 台風30号がフィリピンに襲来したのは、各国政府の代表がポーランドワルシャワに集まり、気候に関する新しい世界的な取り決めの作成に取り組んでいるときだった。

フィリピン代表は台風30号を例に挙げ、気候変動の「厳しい現実」をもっと理解して行動するよう世界各国に求めた。

 英気象庁のヘミング氏は、モデルに基づくと「台風の強さが今世紀末までに数%増すと予想できる兆候がある。しかし、今回の台風のような1つの出来事を気候変動と直接関連付けることはできない」と述べた。

 その大きな理由は、嵐のサイクルはばらつきが大きく、スパンが数十年に及ぶこともあるからだ。科学者は理解を深めるために1世紀ないしそれ以上さかのぼってデータを検証する必要があるが、そういった昔のデータは質が悪いことが多い。

 例えば、05年にカトリーナが襲来した際、世界の熱帯低気圧の活動は活発だったが、その5年後には過去30年間で最低の水準にまで落ち込んだ。

 今年は、大西洋では過去約20年間で最も静かなハリケーン・シーズンを迎えている。一方、台風30号が襲った西太平洋の活動水準は平均的だ。

 台風、サイクロン、それにハリケーンは同じ種類の嵐だ。それらは海洋から熱エネルギーを取り出し、それを強風という形でまき散らすエンジンだと言える。

気候学者は、海水温度の上昇が嵐を強力にしかねないと述べる。

 もう1つの懸念は、氷床の融解によって海面が上昇し、高潮の規模がさらに大きくなることだ。

 1992年以降の衛星からの記録には、フィリピン沖の海面が世界で最も急速に上昇したことが示されている。海面は世界的には平均で3ミリ上昇したが、フィリピン沖は9ミリ上昇した。

 先週の台風で大きな被害を受けたセブ州では、検潮器の測定の結果、海面が1935年から2011年までに20センチ上昇したことが示されている。

 デンマークコペンハーゲン大学の気候物理学者、Aslak Grinsted氏は、「このうちの多くは自然なばらつきによるものだが、一部は気候変動によるものだ」と述べる。

 温暖化する世界では、海面がどこでも一様に上昇するわけではないと予想されている。その理由の1つはこう説明される。北極で大きな氷の塊が消滅すると、溶けた水は南に向かって流れる。

すると、地球の重力場が極地から赤道に向かってわずかにシフトする。その結果、氷の溶解した場所に近い北ヨーロッパなどでは海面が下がり、赤道に近い場所の海面が上がる可能性がある。

 フィリピンはとりわけ脆弱だ。熱帯低気圧が上陸の際、最大級の風をもたらす傾向にあるためだ。この地域にはまた、湾や入り江が多く存在する。

湾や入り江は嵐の水を大きなエリアに拡散するのではなく、細い水路を通じて水を集める。これが高潮につながる。

 東アジア最大の高潮も、フィリピンで記録されている。1897年に今回の地点から64キロしか離れていない場所で7.3メートルの高潮が発生した。

ルイジアナ州立大学のハリケーン研究者、ハル・ニーダム氏は、台風30号による高潮が「これに匹敵するかもしれない」と話し、「これはカトリーナ以来で最大だ。カトリーナの際は8.5メートルの高潮が発生した」と述べた。

(ウォールストリートジャーナル からです)

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フィリピン台風「復興に10年」、スマトラ島アチェより被害甚大か
ロイター 2013/11/28 15:45

[マニラ 27日 ロイター] -台風30号で甚大な被害を受けたフィリピンについて、同国の建築家協会の専門家は27日、復興には約10年かかるとの見通しを示した。

台風30号は今月8日、フィリピンに上陸し、少なくとも5500人が死亡、1700人以上が行方不明となっている。

レイテ州タクロバンでは市の約90%が壊滅し、の農作物やインフラに5億6300万ドル(約575億円)相当の被害が出た。

専門家らによると、2004年のスマトラ沖地震で被害を受けたアチェよりも、復興にかかる時間と費用が大きくなるという。

フィリピン政府は、台風の影響を受けやすい地域で新たに建物を建設する場合、時速300キロの風に耐えられるよう義務付けた。

ただ、同国の建築家協会は「建物の再建には10年かかるという見通しも出ている。新たな国を作りあげるくらい困難なことだ

   (ヤフーニュース からです)

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