ウクライナ情勢 8月8日~8月12日 人道支援物資
【キエフ=上杉洋司】ウクライナ東部で一方的に「独立」を宣言した「ドネツク人民共和国」の首相を名乗るアレクサンドル・ボロダイ氏が辞任したことが7日、分かった。
同共和国のツイッターが伝えた。後任には、アレクサンドル・ザハルチェンコ氏が就任するという。タス通信によると、同氏は東部ハリコフを拠点とするグループ「オプロート」のリーダー。ボロダイ氏は副首相に就任するという。
共和国幹部によると、ボロダイ氏はロシア国籍で、今年5月にロシア下院の仲介で共和国に合流し、首相に就任した。武装集団の公式通信社とされる「ノボロシア」は当初、ボロダイ氏の辞任情報を否定しており、武装集団内で混乱が起きている可能性がある。
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ウクライナ東部ドネツク(CNN) ウクライナ東部の親ロシア派組織「ドネツク人民共和国」のロシア人指導者が7日、辞任した。
これまで同組織の指導者として「首相」を名乗ってきたアレクサンドル・ボロダイ氏は記者団に対し、自らの辞任と後任には武装組織の幹部を務めるアレクサンドル・ザハルチェンコ氏が就くことを明らかにした。
ボロダイ氏は辞任の理由について「共和国」建設という役目は終わり、ウクライナ人が指導者の座に就くべき時が来たと述べるに留まった。
ドネツク近郊ではウクライナ軍による親ロシア派陣地への攻撃が続いている。ドネツク市とその周辺に向けた砲撃も行われており、地元当局によれば7日だけで市民4人が死亡したという。
一方、ウクライナ軍の広報官によれば7日、ドネツクから北東約40キロメートルの地点でウクライナ軍の戦闘機ミグ29が親ロシア派によって撃墜された。ロシア製の地対空ミサイルのブク(SA-11)が使われたとみられるという。
7月にマレーシア航空17便がウクライナ東部で撃墜された事件では、ウクライナ政府と米国はこれと同じ型のロシア製ミサイルが使われたとみている。
ウクライナ軍と親ロシア派の戦闘の激化により、マレーシア航空機に乗っていた犠牲者の捜索は一時中断を余儀なくされている。
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ウクライナ東部で軍の戦闘機撃墜される、AFP取材班が目撃
AFP=時事 8月8日(金)7時19分配信
【AFP=時事】ウクライナ東部の親ロシア派が掌握する地域で7日、低空飛行していたウクライナ軍の戦闘機が爆発し、炎上しながら墜落する様子を、AFP取材班が目撃した。
MH17便の犠牲者捜索、安全上の懸念で中断
AFPのスタッフは、戦闘機が空中で爆発し、真っ青な空を背景に少なくとも操縦士1人のパラシュートが開いたのを見た。
墜落後も炎を上げて燃える同機の残骸付近の地面が黒く焦げた辺りを、武装した親露派戦闘員2人が走り回り、取材班に向かって現場から立ち去るよう大声で命じた。上空では、高い位置を飛ぶ別の飛行機の音が聞こえていた。
地元住民の1人(17)はAFPに対し、同機が撃墜された後に少なくとも2つのパラシュートが見えたと語った。「戦闘機が頭上を通り過ぎた後で爆発があった。パイロット2人が脱出した」としている。
ウクライナ軍報道官は、親ロシア派が拠点としているドネツク(Donetsk)の北東40キロ付近で、親ロシア派が戦闘機を撃墜したと認め、「操縦士は何とか住宅地を回避した」と述べた。現在操縦士の捜索・救出活動を行っているという。
現場は、先月17日高度約1万メートルを飛行していて撃墜され、乗客乗員298人全員が死亡したマレーシア航空(Malaysia Airlines)MH17便の墜落地点から西へ40キロほど離れた場所でもある。
約4か月前に親ロシア派が同国東部で激しい戦闘を開始して以来、死者は1300人を超えており、ウクライナ軍は多くの航空機を失っている。【翻訳編集】 AFPBB News
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ウクライナ情勢をめぐり、米国や欧州連合(EU)がロシアに対して経済制裁に踏み切りました。それに対してロシアは7日、報復措置として制裁発動国からの農産物などの輸入禁止を発表。欧米とロシアで経済制裁の応酬となっています。
ロシアからの制裁対象に日本は含まれていませんが、そもそもの米国やEUによるロシアへの経済制裁は、どのような内容で、ロシアにどのような影響があるのでしょうか。
【写真特集】マレーシア機ウクライナで墜落
「西側」がロシアを制裁したのは、この3月にロシアがクリミア併合を宣言したことを端緒とします。
その後ロシアが東ウクライナに義勇兵を送り込み、都市の占拠を続けたこと、また7月のマレーシア航空撃墜にロシア義勇兵がからんでいる可能性が強いことにより、対ロ制裁は数次にわたって強化されました。
その内容は当初、ロシア政府・財界要人の入国禁止、及び彼らの在外資産の凍結が主でしたが、7月に米国が発表した追加制裁にはロシアのエネルギー関連案件及び大銀行への融資の禁止、エネルギー開発関連技術の供与の禁止、またEUが発表した追加制裁にはロシアでの投資案件に対する融資の禁止が含まれました。
EUはこれまで対ロ制裁を強化しろとの米国の圧力に抵抗してきましたが、撃墜されたマレーシア航空の乗客にオランダを初めとするEU諸国国民が多数いたことから、世論の対ロ反発が高まったのを受けたものです。
ロシアは当初、西側の制裁に対してタカをくくっているような態度を示していましたが、実際には早い段階からロシアの実業家達はプーチン大統領 に慎重な対応を求めていたものと思われます。
ロシア国内の制度が不便であること、投資機会が少ないことから、ロシアの実業家たちはその資金の多くを西側で運用しているのですが、それを捕捉、凍結されてはたまったものでないからです。
さらに、ウクライナ情勢の悪化を嫌って、内外の資本はロシアから急速に流出しつつあり、今年は1000億ドル弱の純流出が予想されています。
加えて、高金利のロシアを嫌って欧州で借り入れや起債を始めていたロシア企業は(BIS=国際決済銀行 によると、欧州の銀行はロシアに約1800億ドルを貸し越しています)、その機会を奪われるでしょう。
こうしてロシア国内では資金が不足しているのに、ロシア中銀は7月末、ルーブル下落を防ぐため金利をさらに上げました。
ロシア経済は昨年から停滞の様相を強めているので(昨年の実質成長率は1.3%)、これらの要因は景気をさらに冷やす方向に作用し、今年のロシア経済はマイナス成長に落ち込む可能性も指摘されています。
次に、ロシア経済を支えているエネルギー資源の輸出ですが、欧州がロシア原油や天然ガスの輸入を大きく削減することは、戦争が起こらない限り考えられません。
米国がシェール・オイルやシェール・ガスの生産を増やしていると言っても、これを欧州に大量に輸出できる態勢が整うには1年では足りないでしょう。
しかも、米国のシェール・オイルやシェール・ガスは、埋蔵量の大きな箇所が少ないこと、環境問題を起こしがちであることなど、問題をはらんでいます。
逆に、ロシアが欧州への輸出を自ら削ることは、自暴自棄でも起こさない限りないでしょう。中国への原油輸出はパイプラインの容量の限界があります。天然ガスに至っては中国に至るパイプラインがありません。
エネルギー関連の融資、技術供与を停止されたことは、ロシアの今後に大きく響きます。
ロシアの国営石油会社「ロスネフチ」は米石油大手「エクソン・モービル」と合弁を作り、計20兆円分を投資して北極圏や西シベリア・シェール・オイルの開発を策していましたが、このロシア経済の将来を握るとも言える大プロジェクトも頓挫することになります。ロスネフチの資金・技術力だけでは不足なのです。
EUはロシアへの兵器売却も停止しつつあります。またロシア軍は、東・南ウクライナの企業が生産する兵器・部品に大きく依存してきましたが、これの輸出が停止しています。
ロシアは、ソ連崩壊後老朽化した軍装備の70%を2020年までに更新する計画を実行中ですが、それは大きく遅れることになるでしょう。
ロシアは、経済が表面上大きくとも(約200兆円でカナダ並み)脆弱なのに、「ユーラシア連合」と称するソ連的な存在の樹立を図っているところに無理があります。
金融や技術を西側に握られているために、少し歯向かうとすぐ追い詰められてしまうのです。
このようなプーチン大統領をロシア世論が支持し続けるか(7月末は空前の86%)、見限るか(これからインフレが進む可能性があります)、それともプーチン大統領が捨て身の対ウクライナ攻勢、あるいは逆に予想外の和平攻勢を示してくるか、事態はその分かれ目にあります。
プーチン大統領はウクライナに執着し過ぎて、西側と正面衝突する時期を早めてしまい、それは彼自身の権力維持に危険なものとなる可能性があります。
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【AFP=時事】ロシアは11日、赤十字国際委員会(International Committee of the Red Cross、ICRC)と連携してウクライナ東部に人道支援部隊を派遣する意向を明らかにした。これに対し欧米では、人道支援が軍事介入の隠れみのにされるのではないかという懸念の声も上がっている。
ウクライナ東部で激戦、政府軍15人死亡
これについてウクライナ政府は、支援部隊の派遣は予定されているが、その活動には欧米諸国も関与し、ロシア単独ではないという見方を示している。
ロシア大統領府は声明で、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)露大統領が欧州委員会(European Commission)のジョゼ・マヌエル・バローゾ(Jose Manuel Barroso)委員長に電話で「ロシア側は赤十字国際委員会の代表と連携し、ウクライナに人道支援部隊を派遣する」と伝えたと発表した。
さらにプーチン大統領はバローゾ委員長に対し、ウクライナ東部はウクライナ政府軍による軍事作戦で壊滅的な被害を受けているとして、人道支援部隊を直ちに派遣する必要性を訴えたという。
ウクライナ政府軍が同国東部で親ロシア派武装勢力が掌握する複数の大都市の包囲を進める中、ロシアは人道的停戦を強く要請している。しかし欧米諸国は、ロシアが国境地帯に増派しているとされる軍の部隊をウクライナに入らせる口実に人道支援という名目を使うのではないかと懸念している。
これについてドミトリー・ペスコフ(Dmitry Peskov)露大統領報道官は、ロシアの人道支援部隊に軍は関与しないと強調。同報道官はAFPに対し、「軍による護衛は行わない」と伝えるとともに、人道支援部隊の派遣は「ウクライナ政府との合意に基づいている」と述べた。しかし部隊の詳細や、いつウクライナ入りするのかについては言及しなかった。
ウクライナ側は声明で、ペトロ・ポロシェンコ(Petro Poroshenko)大統領がバラク・オバマ(Barack Obama)米大統領と会談し、オバマ大統領から「赤十字国際委員会の主導により、欧州連合(EU)とロシア、ドイツ他のパートナーが参加し、ルガンスク(Lugansk)へ国際人道支援部隊を派遣する」ことへの支持を取り付けたと発表。さらに、「オバマ大統領は、その国際人道支援部隊で米国が積極的な役割を果たすと言明した」としている。
欧州委員会は声明で、「プーチン大統領との会談でバローゾ委員長は、紛争の結果困窮している人々を支援する国際活動にEUも参加する意思を伝えた」としている。同時に、「バローゾ委員長は、人道支援を含むいかなる名目の下でも、ウクライナ国内でのロシア単独の軍事行動は行わないよう警告した」という。【翻訳編集】 AFPBB News
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【モスクワ時事】ロシアのプーチン大統領は11日、ウクライナ東部の政府軍と親ロシア派の戦闘激化を受けて「ロシアは赤十字国際委員会(ICRC)と協力して人道支援団の車列の派遣を準備している」と明らかにした。欧州連合(EU)のバローゾ欧州委員長との電話会談で語った。
仮に国際社会の声を無視してウクライナ東部に人道支援団を派遣すれば、軍事的緊張が極度に高まるのは必至だ。
ICRCはロシア人道支援団への参加を認めていない。一方、ウクライナ外務省は11日、ポロシェンコ政権主導の人道支援をICRC、米国、欧州連合(EU)、ロシアの参加の下で行うと発表している。プーチン氏の発言には、あくまで独自の人道支援派遣を目指す狙いがありそうだ。
ロシア人道支援団には、護衛名目でロシアの平和維持軍などが随行する可能性も指摘される。劣勢にある親ロ派の軍事支援の隠れみのにされる恐れがあり、ウクライナや欧米はロシア主導の人道支援を警戒している。
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【モスクワ時事】ウクライナ東部で続く政府軍と親ロシア派の戦闘で、ロシアの人道支援物資を積んだトラック280台の車列が12日未明、対ウクライナ国境に向けてモスクワを出発した。国営テレビなどが伝えた。2、3日間で国境付近に到着する見通し。
ロシア非常事態省の報道官は「人道支援物資の行き先と引き渡し場所は、赤十字国際委員会(ICRC)やウクライナと協議して決める」と表明。ウクライナ政府の同意がないまま車列を国境突破させることはないと示唆した。
人道支援物資は穀物400トン、砂糖100トン、離乳食62トン、医薬品54トン、寝袋1万2000人分、発電機69基。
プーチン大統領は11日、「ICRCと協力して人道支援の護送車列派遣を準備している」と明らかにしていた。ただ、国際社会の同意はまだなく、「見切り発車」した形だ。
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【モスクワ真野森作】ロシアのプーチン大統領は11日、欧州連合(EU)のバローゾ欧州委員長と電話協議した。露大統領府の発表によると、ウクライナ政府軍が親露派武装集団への攻勢を強めている同国東部について、プーチン氏は「人道支援が早急に必要」と強調、「ロシアは国際赤十字と共同で人道物資を送っている」と述べた。これに対しバローゾ氏は、ロシアが「人道」名目を含む一切の軍事行動に踏み切らないようくぎを刺した。
一方、ウクライナのポロシェンコ大統領は11日、オバマ米大統領と電話協議した。戦闘が続くウクライナ東部のルガンスクへの国際的な人道支援をポロシェンコ氏が後押ししている点について、オバマ氏は支持を表明したという。
ウクライナ国家安全保障・国防会議のルイセンコ報道官は、プーチン氏が言及した人道物資送付について「ポロシェンコ氏と国際赤十字の合意に基づくものなのに、ロシアは自分たちが主導したと偽っている」と批判した。人道援助を巡ってまで中傷合戦となっている。
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ロシア政府は12日、ウクライナ軍と親ロシア派の衝突が激化するウクライナ東部に向けて、人道支援物資を積んだトラックの車列を出発させた。国際赤十字やウクライナ政府と合意した活動だと強調しているが、ロシア軍による介入の隠れみのではないかという疑念も呼んでいる。
ノーボスチ通信によると、12日早朝、モスクワ郊外から人道支援物資を積んだ280台のトラックが出発。食品、医薬品、発電機、衣料品など約2千トンが積まれている。13日午前に国境に到着。親ロシア派の拠点の一つ、ルガンスクに向かう予定だという。
国際赤十字は11日夕、人道支援開始でロシア、ウクライナと合意したと発表。ロシアのペスコフ大統領報道官は12日、ウクライナ側と合意した地点でウクライナ側に入ると強調した。
しかし、ウクライナ大統領府のチャリー副長官は12日、ロシアの軍や緊急事態省の関係者が入国することを拒否し、支援物資を国境でウクライナ側の車両に積み替える考えを示した。このため、支援物資の扱いを巡って、国境で双方が対立する事態も予想される。仮にウクライナ側が物資を運んだ場合でも、親ロシア派が支配地域の通行を認めない可能性もあり、先行きは見通せない。
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【AFP=時事】ウクライナ東部で10日夜、厳重に警備された刑務所が砲撃を受け損壊し、刑務所から多数の受刑者が脱走した──だがその数時間後、ある受刑者の母親は脱走した息子を車で刑務所に連れ帰った。
ロシア、ウクライナ東部に人道支援部隊派遣の意向 欧米は警戒
母親は、親ロシア派が支配するドネツク(Donetsk)にある刑務所の外で車に乗り込みながら、AFPの取材に「息子自身が言ってました。脱走とみなされないために戻らねばならないと。私たちは法律に従って全てのことを行っています」と語った。
車の窃盗でまだ4年の刑期が残っているこの母親の息子は、10日夜に政府軍の砲弾が刑務所を直撃した際に脱走した受刑者106人のうちの1人。
刑務所当局者は、受刑者らが「パニック」で脱走したと語っている。ドネツク西部の刑務所を政府軍の砲弾が直撃した際、受刑者1人が死亡し、複数が負傷したという。
脱走した受刑者のうち34人は11日までに刑務所に戻った。刑務所当局者はAFPの取材に、脱走した受刑者のうち多数がまだ行方不明だが、近くに潜伏している可能性もあると語った。
「(息子によると)施設に何らかの砲撃があり、外に飛び出すと頭部のない男が倒れていた。息子は怖くなり、弾丸のように逃げ出した。どうやって自宅まで戻ってきたのかも覚えていないそうよ」と母親は説明した。
ドネツクの奪還を宣言したウクライナ政府軍は同市を包囲し、ここ数日、中心部を激しく砲撃している。砲弾が病院や住宅に着弾し、民間人犠牲者の報告も増えている。
ウクライナ東部では4か月前に始まった激しい衝突により1300人以上が死亡、28万5000人以上が避難生活を送っている。【翻訳編集】 AFPBB News
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【モスクワ真野森作、ブリュッセル斎藤義彦】ウクライナ政府軍と親ロシア派武装集団の戦闘が続くウクライナ東部へ向けて、ロシアは12日、食料や医薬品など人道支援物資をトラック280台でモスクワ近郊から送った。
インタファクス通信によると、両国と全欧安保協力機構(OSCE)でつくる「連絡グループ」の11日の合意に基づく。欧米諸国からは、ロシアが人道支援名目で軍事介入する可能性を警戒する声が上がっており、緊張緩和には至っていない。
◇NATO「軍事作戦を偽装か」
輸送トラックはウクライナ東部ハリコフ州を経由し13日にもルガンスク州に到着する予定。だが、ウクライナ大統領府のチャルイ副長官は12日、「国境で赤十字国際委員会(ICRC)の車両に積み替える。
ロシア側の同行者は一切、入国させない」と述べた。フランスのオランド大統領は同日、プーチン露大統領に対し、人道支援はICRCの主導で行われるべきだとの考えを示した。
親露派の支配下にある40万人都市ルガンスクでは、水や食料の不足に加え、停電も起き、避難せずに残っている住民は厳しい生活を強いられている。もう一つの親露派の拠点ドネツクも同様の情勢だ。
ロシアによる支援の実施は、プーチン露大統領が11日、欧州連合(EU)のバローゾ欧州委員長との電話協議で伝えた。オバマ米大統領は同日、ウクライナ政府や国際機関の同意なしにロシアが「人道支援」を行った場合、「国際法違反として追加制裁の対象となる」と警告していた。
ウクライナ東部の戦況は政府軍側が優勢となっており、ドネツク、ルガンスクの両州にまたがる親露派支配地域を分断して、それぞれ包囲を狭めている。政府軍の「対テロ作戦」は最終段階を迎えている模様だ。
親露派組織「ドネツク人民共和国」の新しい「首相」に就任したザハルチェンコ氏は、いったん停戦を呼びかけたが反転攻勢に言及、大規模な市街戦に発展する可能性もある。
ウクライナ政府によると、ロシア軍はウクライナ国境付近に部隊を4万5000人規模で集積させているという。
北大西洋条約機構(NATO)のラスムセン事務総長は11日、ロシアが直接、ウクライナに軍事介入する「可能性は高い」と述べた。
また、「ロシアが人道支援を装い、部隊をウクライナでの違法な軍事作戦に使うかもしれない」との懸念も表明した。
ウクライナ政府によると、親露派武装集団との戦闘で5月からの政府軍の死者は568人にのぼる。国連の発表では、この春の親露派の官庁占拠から兵士、市民も含めた死者は1100人を超えた。
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<露禁輸>東欧など悲鳴 「巨大市場」失い、農水産業に打撃
人道支援物資を載せウクライナへ向かうトラックの車列=モスクワ郊外で2014年8月12日、AP
【ベルリン篠田航一】
ロシアが7日から輸入を禁じたのは、欧州連合(EU)諸国や米国の牛・豚・鶏肉、魚、牛乳・乳製品、野菜、果物などで、主要食料品の多くが対象だ。
バルト3国からの報道によると、エストニアはロシアへの農産物輸出禁止による損失が1億ドル(約102億円)に上る見通しという。リトアニアでは、複数の企業がラトビアの農場と契約し、牛乳・乳製品を生産しているが、主要な販売先だったロシアに輸出できなくなった。
ロシアが禁輸を発表した7日以降、リトアニアからラトビアなどを通ってロシア方面に向かう幹線道路では、各地で肉や乳製品を積んだトラックが立ち往生している様子が報じられた。禁輸決定前に出荷が決まった製品も、ロシアに入れない状況という。
ポーランドでは、ロシアと年間4億ドル(約408億円)規模の取引をしてきた約800社のリンゴ生産業者が影響を受けた。シュネプフ駐米ポーランド大使はビデオメッセージで「ポーランドのリンゴを買って」と米国民に呼びかけている。
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